29エビデンス A

「正しい持ち上げ方」や運搬研修だけで腰痛を防げると思わず、重さと回数を減らし、普段から運動する

運搬姿勢の研修を受けた労働者も、受けなかった人より腰痛が少なくなるわけではありません。持ち上げるときに腰を深く曲げる人も、腰痛になりやすいとは認められていません。関連するのは重さと回数で、1 回 10 キロ重くなる、または 1 日 10 回増えるごとにリスクが約 1 割高くなります。定期的に運動する人は、腰痛の発症が 3~4 割強少なくなります。

費用・手間

お金はかかりません。腰の曲げ方にこだわったり、腰を守る講座やベルトにお金を払う必要はありません。

効果

まず研修です。2011 年版の Cochrane 系統的レビューは、従業員 20101 人の 9 件の無作為化試験をまとめました。

費用・手間

お金はかかりません。腰の曲げ方にこだわったり、腰を守る講座やベルトにお金を払う必要はありません。することは二つです。重い物を分け、台車を使い、誰かと一緒に運ぶのは数分の手間です。週に数回運動する時間を取り、長く続ける必要があります。

効果

まず研修です。2011 年版の Cochrane 系統的レビューは、従業員 20101 人の 9 件の無作為化試験をまとめました。7 件、19317 人では、運搬研修を受けた人と何もしなかった人の、その後の腰痛報告はほぼ同じでした(OR 1.17、95% CI 0.68–2.02、信頼区間は 1 をまたぐ)。映像だけを見た人との比較も RR 0.93(0.69–1.25)で、差はありませんでした。証拠の質は中等度です。著者は、運搬器具の有無にかかわらず、助言や研修では腰痛とそれによる障害を予防できないと結論しました。次は腰の曲げ方です。2020 年の系統的レビューは、運搬時の腰の曲がり方の研究をまとめ、証拠の質は低いとしています。唯一の追跡研究では、後に腰痛になった人とならなかった人の最大屈曲角度の差は 1.5 度(−0.7~3.7)で、有意ではありませんでした。11 件中 9 件で差がなく、別の測り方の 7 件では、腰痛のある人のほうが 6.0 度(−11.2~−0.9)曲げる角度が小さくなっていました。腰を深く曲げると腰痛になるという証拠はない、という結論です。最後に対策です。8 件の追跡研究のメタ分析では、1 回の荷物が 10 キロ重くなるごとに OR 1.11(1.05–1.18、約 11% 高い)、1 日 10 回多く運ぶごとに OR 1.09(1.03–1.15、約 9% 高い)でした。別の分析は 21 件の無作為化試験、30850 人をまとめています。運動と教育の併用は発症リスク RR 0.55(0.41–0.74、約 45% 低下)、証拠の質は中等度。運動だけは RR 0.65(0.50–0.86、約 35% 低下)、質は低い~非常に低い。教育だけは RR 1.03(0.83–1.27)、腰ベルトは RR 1.01(0.71–1.44)で、効果は認められませんでした。英国安全衛生庁(HSE)の公式指針も、研修だけでは安全な運搬は保証できず、よい手法も器具の導入や作業・荷物の改善に代わらないとしています。

出典

Verbeek JH, Martimo KP, Karppinen J, Kuijer PP, Viikari-Juntura E, Takala EP. (2011). Manual material handling advice and assistive devices for preventing and treating back pain in workers. Cochrane Database of Systematic Reviews, CD005958. https://doi.org/10.1002/14651858.CD005958.pub3;Saraceni N, Kent P, Ng L, Campbell A, Straker L, O'Sullivan P. (2020). To Flex or Not to Flex? Is There a Relationship Between Lumbar Spine Flexion During Lifting and Low Back Pain? A Systematic Review With Meta-analysis. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 50(3), 121–130. https://doi.org/10.2519/jospt.2020.9218;Coenen P, Gouttebarge V, van der Burght AS, et al. (2014). The effect of lifting during work on low back pain: a health impact assessment based on a meta-analysis. Occupational and Environmental Medicine, 71(12), 871–877. https://doi.org/10.1136/oemed-2014-102346;Steffens D, Maher CG, Pereira LS, et al. (2016). Prevention of Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Internal Medicine, 176(2), 199–208. https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2015.7431;Health and Safety Executive. Manual handling at work: Training; Good handling technique. https://www.hse.gov.uk/msd/manual-handling/training.htm;https://www.hse.gov.uk/msd/manual-handling/good-handling-technique.htm;反方:Wai EK, Roffey DM, Bishop P, Kwon BK, Dagenais S. (2010). Causal assessment of occupational lifting and low back pain: results of a systematic review. The Spine Journal, 10(6), 554–566. https://doi.org/10.1016/j.spinee.2010.03.033

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著者の注記

議論があります。重さと回数の見解は一致していません。2010 年の系統的レビューでは高品質の 9 件中、4 件に関連があり、5 件にはありませんでした。著者は、仕事で物を運ぶことだけが腰痛を引き起こす可能性は低いとしています。「重い物を減らす」は関連の証拠だけで、因果は証明できません。屈曲の研究は質が低く、多くは同じ時点の 2 群を比べただけです。研修のレビューは信頼区間が広く、既存の腰痛を治療できるかを調べた無作為化試験もないとしています。HSE は今も、荷物を腰の近くに置き、足を安定させ、腰をひねらず、急に引かない手法を教えています。立ち上がるときは背中・股関節・膝を少し曲げるほうが、腰だけを深く曲げる、完全にしゃがむよりよいとしています。守って損はありませんが、それだけで防げるとは思わないでください。利益を中としたのは、減少率なら運動は大に相当するものの、運動単独の証拠の質が低く、教育との併用でも病欠が減るとは認められず、腰痛自体は致命的ではないためです。運動は第2節第16項(週 30–60 分の筋力トレーニング)と第2節第11項(毎日 7000–8000 歩)を参照してください。受益者はあなた自身です。

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